無料カウンセリング、体験パーソナルトレーニングにお越しいただいた際に、お身体の不調を訴えられる方は多いです。
その多くは治療の要らない軽微なもので、肩や肘、膝など、傷害部位や痛みの度合いによってはその部位への負荷を避けてのパーソナルトレーニングは可能ですが、首から腰にかけての背骨(脊柱)に痛みがあるとそうはいきません。
背骨の中の痛みで一番多いのが腰痛です。
腰はまさに字の如く体の要で上半身のどの部位をトレーニングするにも、脚をトレーニングするにも必ず負担がかかります。
軽度なものであればなるべく負担がかからないように種目を選んだり、腰痛を予防するためのトレーニングベルトを巻いてワークアウトすることは可能ですが、痛みや違和感がそこそこ強い様であれば行える運動も制限されますし、悪化してしまうリスクは否めません。
フィットネス業界ではパーソナルトレーナーが徒手の検査を行って、症状の見立てを行い、治療に近いアプローチを行うのが最近のトレンドですが、診断を下し、治療を行えるのはあくまでも医師の領域です。
ただの腰痛かと思ってマッサージやストレッチなどをしても、最悪の場合、内臓疾患が原因であれば発見が遅れ、病状が悪化してしてしまう可能性すらあります。
腰痛に限りませんが、明らかに軽微なケースを除き、トレーナーが自分の技量を過信して安易にお怪我の状態を判断し、治療のようなアプローチを行うべきではないというのがボディメイキングボックスのスタンスですので、医師の診断や指示無しに症状への積極的な介入は行いません。
無料カウンセリングの際に腰痛がひどい場合や神経症状が認められる場合は然るべき治療を受け、万全の状態に整えられてからパーソナルトレーニングをはじめられることをお勧めしております。
痛みや痺れがある場合は、無料カウンセリングにお越しいただく前に、まずは麻布十番のパーソナルジムご予約メールフォームよりお問い合わせください。
腰痛と一口に言っても放置していれば違和感が緩和するものから何かしらの処置が必要な強い痛みを発するものまで様々です。
以下に該当する診断を受けたことがあり現在も強い違和感を感じる方や、軽度な違和感とは違う痛みを感じる方は、パーソナルトレーニングを開始される前に念のため、医師への相談をおすすめする場合がございます。
また、治りかけの急性腰痛(ぎっくり腰)もまずは寛解をお待ちいただき、医師の同意を得てからトレーニングを開始されることをお勧めいたします。
※一部画像にパーソナルトレーナーのノートを含み、見づらい箇所があります
腰痛や腰に違和感を抱えている方は、パーソナルトレーニングを開始する前に基本的な背骨の構造や代表的な症例を把握することで、どのようなメカニズムで悪化してしまうかのイメージがしやすくなり、避けるべき姿勢、動作がより深く理解できます。
頸椎(上図1)7個、胸椎(上図2)12個、腰椎(上図3)5個、仙骨1個、尾骨1個の計26個の椎骨と呼ばれる骨が積み木のように積み重なって脊柱(背骨)を形成します。
背骨は頸部から腰部まで、椎骨が積み重なって形成されますが、頭部から腰椎にかけて、下位にある椎体にはより大きな負荷が掛かる為、下位に行くごとにより大きく強い構造となっています。
脊柱は側面から見るとS字を描いていますが、これを生理弯曲といいます。生理弯曲は、頸部では頭を支える為、重心に近く位置し、胸部では胸腔内臓器を格納する為、脊柱は後弯し、腰部は上位の全ての負荷を支える為、頸椎と同様の理由から重心により近くなるように前弯しています。
脊柱の生理弯曲は長軸方向にかかる負荷を分散させる役割もあり、脊柱がまっすぐと仮定した場合と比較すると背骨にかかる負担を10分の1までに軽減させています。
以上の防衛構造を以ってしても、頸部や胸部と比較すると腰部に不調が多いのは、座位であろうと立位であろうと、常にそのすべての上体の重みを腰部が支えているためです。
ヒトが二足歩行を行う限り避けられない、いわば宿命のようなものです。
左上から第一頸椎(環椎)、右隣第二頸椎(軸椎)、下の段第四頸椎、下の段第六胸椎、下の段第三腰椎
一つ一つの骨を椎骨(画像の青色に塗りつぶされている部位の上下)といいます。
前方の円柱を椎体、後方を椎弓(こちらの画像では魚の尾びれ様の部位)といいます。
上下椎骨は完全には離れておらず、椎弓から関節突起と呼ばれる関節を上下に有しています。
椎骨間には椎間板と呼ばれる軟部組織(画像の青く塗りつぶされている部位)が存在し、頭部や上位椎骨の重さを支える緩衝材として機能しています。
腰椎の第5椎骨。オレンジの枠内が椎体、水色の枠内が椎弓です。
椎間板は各椎骨間にあり、脊柱を前後左右に曲げる動きを滑らかにしたり、衝撃を吸収する緩衝機能を果たしています。
腰椎を曲げると椎間板には想像以上の圧力がはたらきます。
木の年輪のように見えるパーツの中心の球状の部分は80%超の水分を含むゼラチン様の物質で髄核といいます。
髄核は弾力性に富んでいて、その周りを取り囲む樹木の年輪のようなものは線維輪といい、軟骨のような組織が髄核を何重にも包んだような構造になっています。
加齢により髄核の水分が少なくなり、線維輪にも余分な負荷が掛かるようになると椎間板の強度が下がり、退行変化がはじまります。
線維輪は斜めに走行した線維の層で内外で繊維の走行を交互に換えて、その中心の髄核が突出しないように強度を高めています。
左図は樹木の年輪様の椎間板を分解したもの。
椎体と椎弓の間には椎孔があり、椎骨の連結で脊柱ができると、椎孔の連なりは脊柱管となります。
脊柱管の中には脊髄が収納されていますが、腰部では脊髄から神経細胞がなくなり、神経線維の集まりの馬尾神経となります。
第5腰椎椎骨。赤い三角形の内側が椎孔です。
矢状断面において靭帯には2種類の系統があります。
一つは脊柱に沿って走行する前縦靭帯(1)と後縦靭帯(5)で、もう一つの系統は各椎弓間に走行する分節間の靭帯です。
前縦靭帯(1)は長く厚い帯状で、脊柱全面で後頭骨底部から仙骨まで伸びています。この靭帯の端から端まで走る長い線維と各椎体間を結ぶ短い線維からなり、短い線維は椎間板(3)前面に付着します。このように椎体前面上部と前面下部の隅の部分は空間(4)となり、骨増殖(骨棘)により変形性腰椎症を起こす部位でもあります。
後縦靭帯(5)は後頭骨底部から仙骨管まで達しています。短い弓状の線維は椎間板湖面に付着しますが、椎体後面には付着していません。
椎弓は厚くて強靭な黄色の靭帯、黄色靭帯(11)では横断されている(12)によって次の椎弓に接合されます。
(14)内側靭帯
(15)棘間靭帯
(16)棘上靭帯
(17)横突間靭帯
以下はこちらでパーソナルトレーニングを開始する前に、医師への相談をおすすめすることが多い主な疾患です。
その中でも特に多い椎間板ヘルニアと脊椎分離・すべり症について簡単にご説明いたします。
繊維輪に裂け目ができてそこから髄核がはみ出してしまった状態です。
強い炎症が起きると腰部や脚に激しい痛みやしびれを伴います。
椎間板ヘルニアは首から腰まで、どの部位でも発生する可能性がありますが、腰が好発部位です。
椎間板は縦方向の圧には強いのですが、曲げたり捻ったりなど、横方法には比較的弱い性質を持ちます。
特に腰椎椎間板は上位の椎体や上半身を支える長軸方向の圧が常にかかり、休むことなく圧迫されている為に老化が早く、前述のとおり腰椎の4、5番目が好発部位です。
通常、椎間板ヘルニアは体幹を前屈して物を持ち上げる際に起きるといわれています。
1
2
3
最初の段階(1)では体幹屈曲により椎間板前方が圧迫され、椎間板後方が開きます。
次の段階(2)では物を持ち上げると同時に軸方向の圧が増し、椎間板を全体的に圧縮し、その結果、髄核は極端に後方に押されて後縦靭帯の深層に達します。
更に次の段階では(3)体幹を直立させるとヘルニア塊が形成した通路は椎体の圧により切断され、ヘルニアは後縦靭帯の中に嵌入します。
これが腰部の急性腰痛、もしくは腰痛の原因となります。
この初期の腰痛は自然回復する事がほとんどですが、繰り返される線維輪への微細な外傷によりヘルニアは大きくなり、脊柱管中にはみ出して行き、進行していくと坐骨神経痛を引き起こします。
以上を踏まえ、デッドリフトを例に挙げると、体幹を固めず、腹圧を高めずに腰椎を屈曲させて行うといかに危険かのイメージがしやすいかと思います。
腰部に負担が大きいトレーニング種目を行うパーソナルトレーニングでは、腹圧を意識して腰椎の過剰な屈曲や伸展に留意し、場合によってはそれらの動作を伴わない種目を選択します。
髄核の前方脱出はまれで、後縦靭帯の最も弱い後外側への脱出がほとんどです。
初期の治療は骨盤けん引治療や温熱・低周波治療などをおこない、同時に湿布剤を使用します。
更に症状が強い場合はブロック注射などを行います。
これらの保存療法でも症状が改善しない場合は髄核摘出手術を行う場合があります。
(赤い部位がヘルニアです)
椎骨の前方部を椎体(長方形様部位)、後方を椎弓(こちらの画像では魚の尾びれ様部位)といいます。
上下椎骨は完全には離れておらず、椎弓から関節突起と呼ばれる関節を上下に有しています(椎間関節)。
脊椎分離症の分離とは骨折(椎弓の関節突起の疲労骨折)、脊椎すべり症のすべりとはずれ(椎体の前方へのずれ)という意味です。
同じ姿勢を取り続けると上半身の重みが椎弓の分離した部分やずれかけた椎間板などに力学的に弱い部分にかかってきてしまい、そのために腰痛が起こります。
立ちっぱなしがつらかったり、イスに長時間座れないなど同じ姿勢を長時間続けると痛む腰痛の原因であることが多いです。
画像は正常な腰仙関節です
骨が成熟していない成長期に激しいスポーツをして、椎弓部が疲労骨折を起こし、本来一体であるべき脊柱骨が分離します。
特に腰部を反らすような動きの多いスポーツを学生時代に行った経験がある方がなりやすいとされています。
この時期にスポーツを中断してコルセットなどで固定すれば骨癒合も可能ですが、この時期を逃すと分離して残ってしまいます。
分離症は若年期には腰痛はあまり無く、自覚症状のないまま成長しますが、加齢とともに椎間板に弾力がなくなり、体重増加や急な運動で分離した脊椎骨にずれの力がかかるとそれが神経を刺激して腰痛を招きます。
デッドリフト、バックエクステンションなど腰部を大きく反らすようなエクササイズは禁忌とされています。
上記トレーニング種目はウエイトトレーニング用のベルトを装着して行えないこともありませんが、一般の方のボディメイクが目的であれば他の種目を行うことをお勧めさせていただいています。
トレーニングベルトの詳しい説明はトレーニングベルト着用の目的をご覧ください。
肩よりも上に物を挙上するエクササイズ(ショルダープレスやフレンチプレスなど)や、体幹でリズムを取るような細かい腰の反動を伴うエクササイズ(バーベルカールやフロントレイズなど)は座位で行った方が腰椎の過剰な前弯のリスクを減らしやすいです。
3種類のすべり症について解説いたします。
先天性のものです。
お尻が出っ張り腰部を反らし気味の姿勢が特徴で、体が硬く前傾が制限されたり、腰痛とともに足指に力が入らなくなったり足裏のくぼみが変形してしまったりする場合もあります。
手術が適用になるケースが多いです。
分離症から進んで椎体が前方へ滑ってくることで起こります。
関節突起部が骨折しているため、椎体への前方へのすべり止めが効かなくなる結果起こります。
①のような麻痺症状よりも腰痛、坐骨神経痛に進むことが多いです。
中年以降の疾患で女性の方が多いとされます。
好発部位はL4ーL5間です。
椎間関節もすり減っているため第4腰椎の下関節突起が第5腰椎関節の上関節突起を乗り越えるようにずれていき、脊柱管は前後が狭くなります。
その状態を狭窄といいますが、歩行時に狭窄が強まり、足がしびれるなどの症状が出ます。
しゃがんで休憩すると症状が緩和しますが、これは狭窄状態が軽くなるためです。
これを間欠性跛行といい脊柱管狭窄症や変性すべり症の特徴です。
一度に歩行できる距離が短くなるような場合は手術が適用となります。
椎間板ヘルニア、脊椎分離・すべり症のほかにも脊柱管狭窄症、変形性脊椎症などの診断を受けたことのある方は、現在痛みが無い状態であっても基本的には医師に相談の上トレーニングを開始されることをお勧めしております。
また、骨粗しょう症の方のトレーニングはお断りさせていただいております。